最近の家庭用インクジェットプリンターは高性能化しており、中にはプロの写真家の展示にも耐えうる品質で印刷が可能な物まであります。
私も実際に展示やグッツ用の写真印刷のほとんどを市販されている小型プリンターを利用して、自分のオフィスで印刷しています。
どのプリンターを選ぶべきかは、まず対応しているインクが「顔料」か「染料」かで判断する事ができます。この記事では私が実際に使用しているプリンターの印刷結果等を紹介しつつ顔料と染料の違いやお勧めの用途等について紹介していきます。
染料と顔料の違い
染料の特徴
染料は、写真用紙にインクを浸透させ染める方式の印刷方法です。紙に染み込む為表面が滑らかになり、光沢感や鮮やかな発色が得られます。しかし染めている為、物理的な仕様で若干滲みが発生します。写真展に等に出展する様な350dpiの高解像度の表現は完全には再現できないという事になります。しかし、家庭用に印刷する分には全く問題ありません。エプロンのエントリーモデルの多くは染料を採用している物が多く、低コストで高品質の写真がプリント可能です。
以下は実際にエプロンの3万円台のエントリー機「EP-M553T1」で印刷した物です。モデルさん目的で来場されたファンの方向けに印刷しました。展示作品のベスト品質ではありませんが、今回のニーズは目的モデルさんの記念品で「2000円のサイン入りの記念商品」を収集しているのであり、「3万円の写真家プリント作品」を求めている訳ではないという事です。
「EP-M553T1」は、ipadと有線接続が可能ですから転送速度も速いですし印刷がとても楽です。インクは「タケトンボ」という種類の専用カートリッジを使います。出回っている互換インクが優秀です(私は「TAK-4CL-L-2SET」使っています)。コストパフォーマンスにとても優れたこのプリンターはご家庭用に本当におススメできます。
また、長期保存には向きませんので写真家として納品する作品としては不向きだと言えます。
顔料の特徴
顔料は、写真用紙の表面にインクを定着させる印刷方法です。速乾性がある為、テストプリントしてすぐ調整する事が容易です。微細な粒子の吹き付けで表現する為、プリンターの性能に印刷結果は左右されます。ハイエンドモデルで採用される事が多く高価です。300dpiを超える高解像度を表現する為には顔料インク対応のプリンターで印刷する事が必要といえます。
また、顔料インクはオゾン分解の耐性が強く、劣化しにくいという特性がある為、写真展の作品プリントに適していると言えます。
顔料プリンタは「SC-PX1VL」がおすすめ
私が写真展用に使用している顔料プリンターは、エプソンのプロセレクションシリーズ「SC-PX1VL」です。黒と青にこだわった「UltraChrome K3Xインク」を採用し、1.5pl(ピコリットル)の微小インクで印刷表面を平滑化しています。滲まず高解像度を実現しています。
ピコリットルの表記はplで,インク液滴の体積を表す単位。1ピコリットルは10のマイナス12乗リットル,すなわち1兆分の1リットルである。1ピコリットルとは1辺が10μm(1/100mm)の立方体の体積である。
※引用:https://www.jfpi.or.jp/webyogo/index.php?term=3259
また、顔料インクの速乾性と滲みにくい特性を生かしライトグレーでコーティングしてから黒を重ね深い黒の表現を実現しています。
青の表現についてもディープブルーカートリッジが追加された事によって色再現度が向上しています。
さらに、コンパクトなボディーの割にA2サイズまで印刷が可能です。以下は私のデスクに置いている様子です。結構小さいですよね。
印刷の様子
10色インクすごい、、、青と紫と黒の階調が全然違う、、、。
iPadから直で印刷の様子。#EPSON #SCPX1VL pic.twitter.com/5IcUIvFcQd
— TAIKI KOGUCHI【渋谷ルデコ/写真展.6/22-7/4】 (@photo_angle360) June 24, 2021
弱点
個人的には大変満足しているのですが、一つだけ気になる点があります。
「インク代が高い!!!!」
以下はインクを初期充填した際の様子です。仕様なので当然ではあるのですが10本インク約2万円を初期充填だけで7割程度消費してしまいました。
しかし、A2サイズを自宅で手軽に出力できるのは魅力ですし、色調整を即座に行えるのは非常に便利です。頻繁に写真展に出展される方や印刷物が多い方にはとてもおススメのプリンターです。
印刷結果のまとめ
染料
・光沢があり鮮やか
・写真用紙の素材の影響を受けやすい
・滲みやすい
・中間色の表現が得意
・長期保存には向かない
・コストパフォーマンスに優れている
顔料
・解像度を要求される印刷にも対応可能
・滲みにくい
・写真用紙のバリエーションが多い
・劣化しにくい
・インク代が高い